【2017-2025総括】中学受験算数「良問大賞」9年の軌跡と、変わりゆく学びの姿

算数/数学の世界

中学受験に携わる保護者の方々から、「最近の算数は、自分たちの時代とは比べものにならないほど難しくなっている」という声をよく耳にします。確かに、近年の入試問題は深化を続けており、一見するとその難易度に圧倒されてしまうかもしれません。

なぜ、これほどまでに難しくなっているのか。 その問いの先にこそ、これからの子どもたちに求められる「学びの姿」が隠されていると私たちは考えます。

ワンダーファイ代表の川島慶は、10年近くにわたり、主要な中学校の入試問題を自ら解き続けてきました。その過程で出会った、学校側の意図や教育への情熱が込められた一問一問を「良問大賞」として記録しています。

私たちがこの活動を続ける理由は、シンプルです。

中学受験という経験が、単なる知識の詰め込みや、数値目標を追うだけの時間で終わってほしくないと考えているからです。たとえ選抜のための試験であっても、その準備期間が、子どもたちにとって「知的なわくわく」に満ちた、一生を彩る糧となる時間であってほしい。そう願っています。

中学受験算数は、解くたびに思考が躍動する、世界に誇るべき日本の「文化」でもあります。「良問大賞」という記録を通じて、過酷な状況の中にある学びを、より豊かで健全なものへとアップデートする一助になれば幸いです。

2026年の入試が本格化する今、改めて過去9年間にわたる入試問題の変遷を振り返り、中学受験算数が目指してきた「学びの輪郭」を紐解きます。

1.算数は「知のオリンピック」へ。挑戦を肯定する視点(2024年まで)

2024年までの総括では、近年の算数の進化を「知のオリンピック」と表現しました。 将棋やサッカーの戦術が成熟していくように、算数もまた「競技性」が高まっています。単なるパターン学習では太刀打ちできない「誠実な難問」に挑む受験生たちは、もはや知のアスリートのような存在です。

当時、川島はこう記しています。

「お子さまがどの学校を受けたとしても、ここまで準備をしてきて、挑戦したこと自体が、とんでもなくすごいことだ」

この言葉は、結果の成否以上に、未知の問いに向き合い続けたプロセスそのものを、一つの価値ある挑戦として肯定したいという、私たちの根底にある想いを表しています。

2.問題の「向こう側」にある、豊かな学びを願って(2025年)

2025年の振り返りでは、問題の難易度以上に「子どもたちが過ごす時間の質」について深く言及しました。

中学受験算数が日本が誇る「文化」であることを再確認した上で、「中学受験算数の入試問題は、受験に臨む子どもたちの学びの体験を豊かにするものが望ましい」としています。

入試は選抜の場ですが、同時に「学校から受験生への最初の授業」でもあります。

解いている瞬間に算数の醍醐味が凝縮され、解き終えたときに、たとえ正解に届かなかったとしても、思考体験として何かが残る。そんな出題者(学校)の誠実な姿勢と、それを受け取る子どもたちの知的なわくわくが交差する瞬間を、私たちは「豊かな学び」と呼んでいます。

単なる「難問の攻略」ではなく、一問を通じて「算数とはこれほどに面白いのか」と心が動く体験。そんな一問を、私たちは今年も探し続けています。

【中学入試算数「良問大賞」総括アーカイブ】

2025年:学びを「豊か」にする一問とは?

暗記量では差がつかない「問題形式の工夫」に注目。開成などの難関校が、なぜ「見たことのない問題」を出すのか。その真意と健全な学びのあり方を考察しました。

>>>中学入試算数 良問大賞2025

2024年:「知のオリンピック」と化した入試をどう捉えるか?

算数がサッカーや将棋のような「競技」へと進化した背景を分析。過熱する中学受験の中で、挑戦した子どもたちをいかに肯定すべきか、保護者の方へメッセージも綴っています。

>>>中学入試算数 良問大賞2024

2023年:「誠実な難問」が、過負荷な反復学習を終わらせる

思考力そのものを問う「誠実な難問」が、塾と学校のいたちごっこに終止符を打つ可能性について。丸暗記に頼らない学習の重要性がより鮮明になった年でした。

>>>中学入試算数 良問大賞2023

2022年:「東大入試」や「STEAM教育」に繋がる算数の本質

中学受験の算数は、実は「大学数学」とも地続きであるという視点。AI時代に求められる「自ら問いを創造する力」が、入試問題にどう現れているかを解説しました。

>>>中学入試算数 良問大賞2022

2021年:「すべて答えなさい」という形式に隠された、学校側の配慮

近年増えている「答えを全て書き出す」問題。そこには、記述(言語化)の負荷が高い小学生を正当に評価し、試行錯誤の過程を掬い取ろうとする学校側の「優しさ」が隠されています。形式の変化から、学校が求める「試行錯誤の筋の良さ」を読み解きました。

>>>中学入試算数 良問大賞2021

2020年:令和の幕開けに現れた「趣ある問題」と「原点回帰」

斬新な問題が生まれる一方で、算数の本質を突く「原点回帰」の動きも。良問とは何かという、私たちの活動の原点を見つめ直した総括となりました。

>>>中学入試算数 良問大賞2020

2019年:算数は「重要文化財」だ。知的躍動を誘発する名作たち

トップ校が放つ、オシャレで気品ある問題の数々。計算負荷を削ぎ落とし、純粋な思考の美しさを問う問題を通じて、算数の芸術性に光を当てました。>>>【2019中学入試算数】世界に誇る日本の「中学受験算数」。 今年も生まれた世界最高峰の美しい問題を振り返る。

2018年:革命前夜。パターン学習の「無限ループ」を断ち切るために

なぜ中学受験の負担は増え続けるのか?その根本原因として「塾と学校のいたちごっこ」を指摘。名門校が、パターン化不可能な「本当の思考力」をどう定義しているのかに注目しました。
>>>【2018年中学入試算数】革命前夜。 パターン化学習の無限ループから子どもを解き放て。

2017年:すべてはここから始まった。「思考力元年」の衝撃

なぜ今、中学受験で「思考力」がこれほど叫ばれるのか。灘・開成・渋幕が示した新時代の幕開け。江戸時代から続く「ただ純粋に、考えることを楽しむ」という算数大国のDNAを再確認し、私たちが「良問」を追い続ける理由を言語化した、バックボーンとなる記事です。
>>>【2017年中学入試算数】「思考力元年」考える力が合否を別つ時代の幕開け

2026年の良問大賞は、2026年2月初旬に公開を予定しています。

今年も、驚きと愛に満ちた一問に出会えることを楽しみにしています!