ワンダーファイ 中学入試算数 良問大賞2026

算数/数学の世界

150ヶ国350万人以上のユーザーが使う思考力アプリ『シンクシンク』STEAM領域の通信教育『ワンダーボックス』中学入試算数アプリ教材『究極シリーズ』など、子どもの「知的なわくわく」を引き出すアプリやコンテンツを作る会社、ワンダーファイ。

ワンダーファイでは、2020年から毎年、独自に中学入試算数の出題傾向や良問をまとめ「中学入試算数 良問大賞」として発表しています。

昨年以降の良問大賞では、算数の思考そのものの楽しさを引き出し、中学受験に臨む子どもたちの学習に健全な影響を与える問題のことを、「良問」と呼んでいます。

「中学入試算数 良問大賞」では、このような「良問」を評価することで、中学入試算数の奥深さや楽しさを広め、知的にわくわくする子どもたちがあふれる未来を目指しています。
入試という制約のある場において、いかにして子どもたちの学びを豊かにできるのか。その答えを、皆さまと共に考えていきたい。そんな思いを込めて、今年の選出を行いました。

また、関東の有名校の入試問題については、解答と講評をこちらに掲載しております。

【あらかじめご了承ください】

・対象となる問題はワンダーファイが確認できたものに限定されており、全ての入試問題ではありません。
・本発表はワンダーファイによる独自の選出であり、各学校と一切の関係はなく、金銭的な対価の発生も一切ありません。

ワンダーファイ 中学入試算数 良問大賞2026

栄光学園中学校 大問1

コピー機による拡大を繰り返し、「元の200%や300%の状態をどうやって作るか」を考える問題です。

「この部分だけ、既定の設定を超えて拡大したい」という状況は、筆者も経験したことがありますし、身近な設定です。小学生の学習事項を逸脱しない自然な出題でありながら、この題材を解いた後には、「最大回数は何回か?」や「回数関係なく考えられるすべての答えは?」といったさらなる問いが、自然と生まれてきそうです。

青山学院中等部 大問13

大人も誤解しがちな「合格者平均」など、入試で用いられるデータについての問題です。受験生にとって身近なデータを扱いながら、パズルのような提示で出題されています。

灘中学校 1日目 大問6

非常にシンプルな出題ながら、実際に取り組もうとすると、200回以上も行われる繰り上がりに対しての工夫が必要です。

南山中学校女子部 大問7

シンプルな出題ながら、中学受験算数平面図形の花形分野である相似形がたくさん出現し、パズルのように解く面白さがあります。

フェリス女学院中学校 大問1(5)

昨年や今年の受験生がたくさん触れてきたであろう、西暦(2025 = 45×45)という事実を巧みに利用したおしゃれな出題です。


入試総括

ここ20年ほど、中学入試算数は難度・高度ともに上昇を続けてきました。学校が新しい切り口で出題し、塾がそれを分析しカリキュラムに組み込み、さらに学校がその一歩先を出題する。この循環は、受験生の学習負担を年々増大させてきた側面があります。

しかし今年の入試問題を見ていると、その流れが少し落ち着き始めたように感じました。翌年以降の受験生が対策として身につけるべき内容を、際限なく増やしてしまうような出題は減り、「既に学んできた内容を土台に、いかに思考を工夫するか」を問う問題が増えていた印象です。

また、会話形式や丁寧な誘導を設ける問題が増えたことも特徴的でした。これは単に難度を下げるということではなく、限られた試験時間の中で、受験生が思考そのものに集中できるよう配慮された結果だと感じます。

背景には、「中学受験が難しくなりすぎている」という問題が、近年社会的にも認識され始めている状況があるのかもしれません。今年の問題には、受験生への配慮と、そのための作問上の葛藤が、随所に表れていました。

作問の葛藤と、受験生への配慮

その象徴的な例が、開成中学校の大問2です。

この問題では、条件を満たす数字の組み合わせを答えさせる設問に対し、

「なお、このときの分数は823と等しくなります」
「なお、このときの分数の和は847と等しくなります」
「この分数の和が17より小さい数となるような数字の入れ方がひとつだけあります」

といった補足情報が添えられていました。

これは、受験生が試行錯誤の末にたどり着いた答えに対し、「他にもあるのではないか」と不必要に時間を費やすことを防ぐための配慮だと推察します。
論理的に「これで尽くされている」と確信することは、限られた試験時間の中では大人にとっても容易ではありません。そうした状況の中で、受験生の年代が得意とする直感的な思考を自然に活かせる設計になっていると思います。

数学オリンピックなどのコンテストでは、答えの手がかりになる情報を問題文に載せることを「美しくない」とする考え方も少なくありません。しかしこの問題からは、そうした美学よりも、受験生が思考に集中できる環境を優先する姿勢が感じられました。

「良問」とは、を問い続ける

一方で、昨年度の問題について、私の恩師でもある井本陽久さんから、このような示唆を受けました。

「試行錯誤そのものを楽しめる優れた問題であっても、入試という形式の中では、答えを出すことが主目的となり、本来の魅力が十分に活かされない場合がある」

こういった視点では、今年の開成の出題も議論の残る問題かもしれません。ただし、限られた試験時間の中で受験生にどのような思考体験を提供するかという難しい課題に対し、出題者が真摯に向き合った結果であることも感じました。

今年は、私自身が入試問題を作成されている先生方と直接お話しする機会にも恵まれました。その中で、入試問題としての制約がありながら、受験生の負担を増やさないための工夫や、思考の楽しさを守るための試行錯誤が、想像以上に深く行われていることを知りました。

そうした背景を踏まえ、本年の「良問大賞」では、「入試としての完成度」というよりは、問題そのものが持つ面白さ、そして翌年以降の受験生の学習負担を増やさないという観点を重視して選出を行いました。

小学生にとって、受験勉強に費やす時間は有限であり、かけがえのないものです。その学びのあり方について議論が生まれることは、子どもたちの学びにとって意味のあることだと考えています。

そのような視点から、今年のグランプリには、栄光学園中学校の大問1を選びました。

考えられる数値や組み合わせを「すべて答えなさい」という出題形式、そしてそれを受け止める解答用紙のあり方は、過去、栄光学園が初めて積極的に導入しました。この形式は一見すると難度が高まるため、導入当時は一部の大手塾から「対策が立てにくい」と批判を受けていた記憶があります。しかし今では、多くの難関校がこのスタイルを採用しています。

この形式の優れた点は、複数ある正解のうち「いくつ探し当てられたか」を通じて、受験生の試行錯誤の筋の良さや思考の網羅性を、たった一度の入試という機会において、可能な限り正当に評価できることです。この延長線上にある変化として、今年度は栄光学園では記述式の問題がなくなり、解答用紙は「答えの記入のみ」になりました。これは、とても意義のある変更だと私は思います。

「プロセスに部分点を与えた方がいいのでは」という意見もあるかもしれません。しかし、小学生にとって思考過程の言語化は、学習においてそれなりの負荷を伴います。また、言語能力が絶賛発達の途中にある小学生に対し、(これは、言語が大人と同等レベルで身についている大学受験においてもそうかもしれませんが)記述過程を評価の対象とすると、「部分点をもらうためのハック(技術)」が指導の現場で横行するようになり、本来の学びの姿とは、かけ離れてしまうことにもつながります。

また、この問題は解き終えたあとに「最大何回まで拡大できるのか」「別の倍率ではどうなるのか」といった新たな問いが自然に生まれる構造を持っています。入試問題でありながら、問題の外側にまで思考が広がっていく。その点において、本問は非常に象徴的な一題だったと感じました。

日本の中学入試における算数問題は、算数の楽しさが凝縮されたものが多く、もはや日本が世界に誇れる「文化」とも呼べるでしょう。

今回、先生方から直接お話しを聞いて、多くの新しい視点をいただきました。試験問題としての制約の中で、算数の面白さを味わえる素晴らしい問題がこれからも多く生み出されていってほしい。それが、筆者の願いです。

以上、ワンダーファイ 中学入試算数良問大賞2026でした。

総評著者

ワンダーファイ株式会社 代表 川島 慶(かわしま けい)

ワンダーファイ株式会社 代表。1985年神奈川県生まれ。栄光学園中学校・高等学校卒業。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。 花まる学習会を経て2014年にワンダーファイを設立。世界150カ国350万ユーザーが利用する思考力育成アプリ『シンクシンク』、STEAM教育領域の通信教育『ワンダーボックス』を開発。Google Play Awardsなど世界的な受賞多数。「算数オリンピック」の問題制作や東京大学非常勤講師も歴任する。2025年7月リリースの『ポケモンフレンズ』にて教育監修・問題設計を担当。著書に『自分の頭で考える子に育つ 学ぶ力の伸ばし方』など。


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