2026年 中学入試 解答速報(算数)

算数/数学の世界

2026年中学入試 算数の解説付き解答速報を公開します。 
※講評は▶をクリックすると記事が開きます。

2月1日 

開成中学校    [問題][解答

[講評]

開成中学校 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

今年の受験生、そして翌年以降の受験生の学びに、過去最高に配慮された出題。

①今年の受験生への配慮
②翌年以降の受験生の学びへの配慮
③それでいて、選抜試験としての「振るい」の機能を果たす

これらを満たすように、出題者がとても腐心されたであろう構成だと感じました。

前提情報として、業界のトップ企業に他社が追随するのと同様、中学入試も同校のようなトップ校に追随する傾向があります。「トップ校と傾向を似せる」ことで、その併願生に受けてもらいやすくなるからです。したがって、塾のカリキュラムも同校の出題内容に大きな影響を受けます。結果として、同校の出題は多くの小学生の有限で貴重な時間における学びのあり方にも、とても大きな影響を及ぼします。

そういった意味で、とてもすばらしい出題でした。
全ての問題のいたるところで冒頭の3点を強く感じましたが、それぞれ象徴的な例を記します。

①今年の受験生への配慮

最も象徴的なのが、大問2です。

どれも、条件に当てはまる数字の入れ方を答えさせる出題ですが、問題文に以下のような一文があります。

「なお、このときの分数は823と等しくなります」
「なお、このときの分数の和は847と等しくなります」
「この分数の和が17より小さい数となるような数字の入れ方がひとつだけあります。」

これらは、受験生が試行錯誤によって辿り着いた結果に対し、「もっと大きいケースがあるんじゃないか」と必要以上に時間を消費しないための配慮だと感じました。

受験生は心身ともに絶賛発達途中で入試を迎えます。高得点をとるための理想的な時間配分を行うのは、多くの受験生にとって厳しく、本来の学びともかけ離れたものです。 
この問題は、答えが合っていると論理的に確信することが限られた時間内では大人でも容易ではなく、受験生の年代が得意とする直感的な思考が自然に試される問題です。
 
数学オリンピックのようなコンテストでは、答えのヒントとなるような情報を載せること(それがなくても答えは定まるのにも関わらず)は「美しくない」と思う出題者が多そうですが、本校はそうしたことよりも受験生への配慮を優先したのでしょう。

同校のような姿勢が他の学校にも影響を及ぼすでしょうし、そうなっていくことを願います。

また、同校を目指す多くの受験生が努力してきたであろう分野から、突飛でない出題も意図的になされており、問題1と3がそれに当たります。

②翌年以降の受験生の学びへの配慮

これまでの中学受験には、受験生の負担を増やす「学校と一部の塾との無限ループ構造」がありました。去年の「良問大賞」の記事から該当箇所を引用します。


中学受験算数の入試問題では、学校側にその意図がなくとも、事前にパターン学習で解法の「型」を習得しているかどうかを問うような問題が出題されることもままあります。これは、一部の受験塾が受験生の合格を支援するため、毎年各校の問題を徹底的に分析し、パターン学習に落とし込んだカリキュラムを提供しているという背景があります。本質的な理解がなくても多くの問題に適用できるような解き方を習得することを、受験生が半ば強いられている状況にあると言っても過言ではありません。

そういった状況で、難関校では、未知の課題に対応できる思考力を問う意図からか「見たこともない問題」も織り交ぜて出題する傾向が今年も見られました。しかし結果的に、受験生からすればパターン学習のストックをひたすら増やして対応していくこととなり、「ここまではパターンとして身につけておいた方がよい」という範囲が拡大し続けています。

今年の同校の出題は、こうしたパターン学習のストックが増えていきにくいものでした。
大問1・2・3は、同校を志望する受験生であれば学習してきた事項の「自然なアレンジ」です。

最も象徴的なのが、大問4です。

六角形が重なった点から、正三角形や三角形を探していくという、設定自体はシンプルながら、全く同じ問題を解いたことのある受験生はほぼいないと思います。
求められている力も、「漏れなく、ダブりなく数えられるか」「そういう数え方を見つけられるか」という場合の数の基本と、形を見つける平面認識力です。

こういったテーマの出題は以前から数多くありましたし、これによって学ぶべきパターン学習のストックが増える、ということには繋がりにくいと考えられます。

③選抜試験としての振るいの機能

こちらも多くの学校が毎年腐心していることだと思います。
出題によって「こういう学習をしてきて欲しい」というメッセージを示しつつ、他の教科とのバランスで算数が得意な子だけが極端に得点するのを避け、それでいて差がつかないわけでもない、という選抜試験としての機能が求められます。

そうした中で、大問1・2・3は比較的取り組みやすく、かつ終盤で健全に差がつくような構成でした。
大問4の後半はかなり難度も高く、時間を持て余すような受験生が出ないように考え抜かれた出題だったと思います。

麻布中学校    [問題][解答

[講評]

麻布中学校 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

工夫次第で計算の負荷を抑えて解けるような、試行錯誤の末の発見を促す問題。例年、同校では「算数の楽しさ」や「考えることの楽しさ」そのものを土台とした、シンプルな問題が多く出題されています。
 
昨今の中学入試算数は、20年ほどの歳月を経て高度になってきています。しかし、同校はその潮流に安易に乗ることはせず、むしろ以前よりも取り組みやすい問題が増えている印象さえあります。これにより、受験生の学習負担が際限なく増大していく現状に対しても、ある程度の歯止めがかけられているように感じます。

桜蔭中学校    [問題][解答

[講評]

桜蔭学園 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

50分という制限時間に対し、煩雑な計算を要する問題、文章量が多く問題を理解すること自体が困難な問題、そして極めて複雑な条件整理を求める問題が並びました。中学受験全体を見渡しても、最も厳しい問題群のひとつであるのが同校の特徴です。4年連続で高い負荷が維持されており、歴代でも屈指の難度といえそうです。

Ⅰ 小問集合
答えの分母が3桁になる計算問題。
典型的な解法を、設定をあえて変えることで見えにくくしている問題。他校であれば大問の最後を飾ってもおかしくないレベルの「場合の数」の問題。

Ⅱ[A]空間図形
知識の有無が結果に影響しそうな内容です。たとえ解法を知っていたとしても、試験時間内に正確に解き切ることは容易ではありません。

Ⅱ[B]道順
いわゆる最短距離の問題に、「斜めの線の存在」「縦横斜めで異なる距離」「立ち寄り地点や向きの指定」といった複雑な設定が追加されています。
一方で、斜めの線が思考を惑わすためだけに配置されているようにも見受けられ、情報の取捨選択が試されました。

Ⅲ 場合の数
電車に乗る際のIC運賃と切符運賃の差異という、身近な題材を背景にした問題です。ただし、税抜運賃、税抜運賃から1.1倍した値、大人・子どもの区分、ICと切符それぞれの運賃体系すべてに注意を払わねばなりません。
大人と子どもで二区間利用し、大人が608円、子どもが304円になる具体的なケースをすべて答える問題では、答えは10通り以上にのぼります。この一問だけで試験時間の50分を使い果たしかねないほどの、非常に厳しい設計となっていました。

Ⅳ 回転体の体積
最後の大問は、他と比較すれば取り組みやすい内容でした。
後半には、大学受験生でも習得している人が少ない「パップス・ギュルダンの定理」を活用すると計算が効率化される問題が含まれています。
合格のためにこうした高度な知識まで網羅的に身につけなければならないという、学習の過熱化のきっかけにならないか心配です。

駒場東邦中学校  [問題][解答

[講評]

駒場東邦中学校 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

駒場東邦は例年、素直な問題と、今までに見たことのないような思考力の本質を試す問題をバランスよく出題します。対して今年は、例年に比べると素直な出題が中心の構成となっていました。

2月2日

 栄光学園中学校  [問題][解答

[講評]

栄光学園 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

遥か昔から、受験のトレンドに左右されることなく、独自の出題スタイルを貫いてきた栄光学園。その問題の特徴は、大きく二つのポイントに集約されます。

第一の特徴は、出題の題材そのものです。知識のみで解ける問題や、煩雑な計算処理を求める問題は極めて少なく、定型的なパターンの反復・ 再現では太刀打ちできません。試行錯誤した後の発見を中心とした、「算数の楽しさ」「考えることの楽しさ」を凝縮した問題を一貫して扱っています。

私は8年前、中学入試における「パターン化学習の無限ループ」が子どもたちの負担を増大させている現状に対し、「中学入試・革命前夜。 パターン化学習の無限ループから子どもを解き放て。」という記事を書きました。「学校が目新しい問題を出し、塾がそれを翌年以降のカリキュラムに組み込む」という構造によって、受験生の負担は増し、入試は高度化し続けています。そんな中、栄光学園の出題はこのループに陥らないように工夫されています。見たことがない問題が多く出題されますが、それを「解いたことがあるか」という経験の有無は、翌年以降の対策には直結しません。つまり、対策のために際限なく学習量を増やす必要がない、ということです。

第2の特徴は、考えられる数値や組み合わせを「すべて答えなさい」という出題形式、そしてそれを受け止める解答用紙のあり方です。この形式は一見すると難度が高まるため、栄光学園が初めて導入した当時は、一部の大手塾から「対策が立てにくい」と批判を受けていた記憶があります。しかし今では、多くの難関校がこのスタイルをを採用しています。この形式の優れた点は、複数ある正解のうち「いくつ探し当てられたか」を通じて、受験生の試行錯誤の筋の良さや、思考の網羅性を、たった一度の入試という機会において、可能な限り正当に評価できることです。

この第2の特徴の延長線上にある変化として、今年度は記述式の問題がなくなり、解答用紙は「答えの記入のみ」になりました。これは、とても意義のある変更だと私は思います。

「プロセスに部分点を与えた方がいいのでは」という意見もあるかもしれません。しかし、小学生にとって思考過程の言語化は、学習においてそれなりの負荷を伴います。また、言語能力が絶賛発達の途上にある小学生に対し、(これは、言語が大人と同様レベルで身についている大学受験においてもそうかもしれませんが)記述過程を評価の対象とすると、「部分点をもらうためのハック(技術)」が指導の現場で横行するようになり、それは本来の学びの姿とは、かけ離れてしまうことにもつながります。

栄光学園の出題は、同校を志望する受験生の学びが過負荷にならないよう、長年「健全な学び」のあり方に貢献してきていると感じます。実際、私が接してきた受験生たちも、栄光学園の過去問にはとりわけ意欲的に取り組み、解くごとに栄光学園を更に好きになる、という声をよく聞きます。一昨年の記事でも書きましたが、入試の競技性が高まり続ける昨今、こうした出題を続ける同校の存在は、子どもの「健全な学び」における救いになっています。他校も出題の参考にして欲しいと長年思っています。

大問1 整数
コピー機による拡大を繰り返し、元の200%や300%の状態を作る状況を考える問題です。
身近な題材でありながら、とても面白い問題でした。「最大回数は何回か」という問いや、回数を明示せずに「すべて答えさせる」構成など、解いた後にさらなる問いが自然と生まれてきそうです。(限られた試験時間において、大問1としてここで止めたのも、作問者の英断を感じます。)
なお、(1)は純粋な計算力を確認する意図が見て取れます。

大問2 速さ
青信号と赤信号の条件を逆転させて考えてしまった受験生がいたかもしれませんが、極力迷わせないような丁寧な誘導が施されています。一方で、最後の設問では絶妙に気づきにくいポイントを突いて出題されています。

大問3 平面図形
直角三角形を移動させ、元の状態と重なる部分について考える、類例の少ない問題です。本問も状況設定の誤認を防ぐ誘導が丁寧ですが、後半はそうした誘導以外の状況にも考察する必要があるという点で、教材としても優れた問題でした。

大問4 整数・規則性
一定の作業量を求められますが、誘導によってそれが肥大化しないよう配慮されています。灘中や麻布中などでも近しい設定は見られますが、本問はそれらとはまた異なる、独自の趣旨を持った問題でした。

 聖光学院中学校  [問題][解答

[講評]

聖光学園 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

例年通り、計算問題や基本問題から、高度な思考力を問う問題まで満遍なく出題されました。近年の傾向として、身近な話題をテーマにした問題がよく見受けられます。今年でいうと、大問2がその象徴的な例といえるでしょう。

日頃、私たちは商品のパッケージなどで「〇〇含有量、当社比2倍」といった表記をよく目にします。しかし、それらが「何の、何に対する割合」を指しているのか、必ずしも明確でないこともあります。

今回の大問3は、こうした日常の疑問を起点に、2種類の成分でできた商品A・Bについて具体的に検証していく問題でした。

 女子学院中学校  [問題][解答

[講評]

女子学院中学校 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

かつての同校の入試問題には、難関校受験で求められるオーソドックスな単元を、無理なくシンプルに問う構成という印象がありました。しかし近年、難度の高い問題や、高度な思考力が試されるような問題(大問5・6・7)が増えている印象です。

  

2月3日

 筑波大学附属駒場中学校  [問題][解答

[講評]

筑波大学附属駒場中学校 入試算数 講評
ワンダーファイ 代表 川島慶

試験日程の兼ね合いから、開成や麻布といった有名私立校との併願が可能な筑波大学附属駒場中学校(以下、筑駒)。定員120人を実力上位の受験生たちが競い合う、男子校中学受験における「ダントツ最難関」と言える同校。
その選抜を目的とした入試問題は、制限時間とのバランスを含め、世界でも類を見ないほどの厳しい構成の一つだと言えるでしょう。

「小さなスケールや単純化したケースでの試行錯誤を、大きい数へと抽象化させる」あるいは「複雑な状況をシンプルに捉え直した上で、細部まで詰め切れるかどうかを問う」が同校が好んで出題するタイプの問題ですが、今年は設定自体がシンプルな出題が目立ちました。以下、各問を振り返ります。

大問1
防犯カメラを用いて、効率的にくまなく監視できる状況を試行錯誤しながら考える問題。理屈で最小のケースを導き出し、具体例な配置を見つけることは可能ですが、その論理の構築は決して簡単ではありません。ここで時間をたくさん使いたくなった受験生も多かったのではないでしょうか。

大問2
設定こそシンプルな「場合の数」の問題ですが、扱う数が大きく、かつ対称性や対等性への高度な注意が求められる、かなりタフな問題でした。

大問3
こちらも設定はシンプルな「速さの応用問題」ですが、状況を理数的に捉え直す高度な抽象化が求められる問題でした。

大問4
40度、40度、100度の二等辺三角形の辺の長さを「15cm、15cm、23cm」と近似した設定で、他の3つの三角形の長さを求めるパズルのような問題です。近似値を用いているがゆえに、解き方によって複数の答えが存在し得ます。

今年も「中学入試算数 良問大賞2026」を発表予定しました!(2026.2.9)

中学入試算数 良問大賞2026

昨年までの「中学入試算数良問大賞&総括」記事もぜひ、ご覧ください。

中学入試算数 良問大賞2025

中学入試算数 良問大賞2024

講評著者

ワンダーファイ株式会社 代表 川島 慶(かわしま けい)

ワンダーファイ株式会社 代表。1985年神奈川県生まれ。栄光学園中学校・高等学校卒業。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。 花まる学習会を経て2014年にワンダーファイを設立。世界150カ国350万ユーザーが利用する思考力育成アプリ『シンクシンク』、STEAM教育領域の通信教育『ワンダーボックス』を開発。Google Play Awardsなど世界的な受賞多数。「算数オリンピック」の問題制作や東京大学非常勤講師も歴任する。2025年7月リリースの『ポケモンフレンズ』にて教育監修・問題設計を担当。著書に『自分の頭で考える子に育つ 学ぶ力の伸ばし方』など。


各校の講評を書いているワンダーファイ代表・川島が手掛ける受験生向け教材もぜひご覧ください。

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