2026年1月15日、花まる学習会の高濱正伸先生と、弊社の代表・川島慶による対談ライブ配信「考えることが好きな子どもの育て方」が開催されました。レポート記事の後編では、中学受験や子どもの特性と向き合うといったテーマを扱っています。
前編はこちらからご覧いただけます。

【テーマ4】学習・勉強への向き合い方(算数・受験)
――【小5女子・中学受験】勉強の仕方が「解法の暗記」になっているようで、少し問題の聞かれ方が違うと解けなくなってしまいます。どうすれば深い理解を伴った勉強に結びつくでしょうか。
川島:まず、小学5年生の中学受験、特に算数は、とてつもなく負荷が高いということをご理解ください。膨大な量と、急に上がる抽象度。その状況で塾に通い続けているだけでも、本当にすごいことです。
ですから、親御さんはまず「よく頑張っているね」というサポーターの気持ちで、お子さんのための「安全地帯」であってほしいと思います。
その上で、もし今の学習環境が「解法の暗記」を助長するような、あまりにも量が多くて本質的な学びに時間を割けない状況だとしたら、それはお子さんの将来の学びへの向き合い方に大きな影響を与えます。預ける環境を変えるという選択肢も、視野に入れる必要があるかもしれません。
高濱:問題を解いてマルかバツか、点数だけで評価される環境にいると、子どもが「暗記」に走ってしまうのはある意味当然です。
大事なのは、できなかった問題に対して、「なぜ間違えたのか」という本質に目を向け、「次はどうすればできるか」を考えることです。
例えば、難しい図形問題が解けなかったとき、その問題の「一番の肝」はどこだったのか。「この図形は、展開図にすれば解けたんだ」というように、アイデアの本質を一言でまとめる。そして、その発想法をノートに記録していく。

こうした地道で丁寧な作業を繰り返せば、成績は必ず伸びます。しかし、多くの子は次から次へと出される課題に追われ、結果だけを問われるため、最も伸びない「暗記」という方法に頼ってしまうのです。
大事なのは、問題の解き方そのものよりも、「勉強の仕方」を教えてくれる塾や先生を選ぶことだと思います。
――【小5男子・中学受験】算数で、試行錯誤することを面倒くさがり、解法を覚えて解こうとします。親としてはそれに苛立ってしまいます。どうしたら考える楽しさが伝わるのでしょうか。
川島:このご質問に対しては、お子さんへの関わり方というよりも、「親御さんが苛立ちを防ぐ方法」をお伝えしたいです。
親御さんの気持ちが穏やかで、心に余裕があることこそが、お子さんへの一番良いアプローチにつながります。何か夢中になれる「推し」を見つけるなどして、お子さんと少し距離を置き、ご自身の心の余裕を確保することを考えてみてください。

高濱:これまでの質問すべてに共通しますが、質問されている親御さん方は、皆さんものすごく「できる」方ばかりです。何が大事かをよくわかっていらっしゃる。
だからこそ、我が子が思い通りに動かないことに苛立ってしまう。しかし、何度も言いますが、親が直接介入する時期はもう終わったのです。
この時期の子どもは、親の言うことは聞きませんが、信頼する先生の言うことなら聞きます。親の仕事は、お子さんが「この先生が好きだ」と思える人に出会わせ、その先生と連携してサポートしていくことです。「私が何とかしてあげたい」という思いから卒業することが、お子さんの成長につながります。
【テーマ5】感情・特性・発達特性との付き合い方
――【小3女子】わからない問題が多いと、「ああ、わからない!」と泣きながらやっています。本人は「泣いてストレスを発散している」と言いますが、心配です。
――【小2女子】わからない問題があると、かんしゃくを起こしたり怒ったりします。どう関われば良いでしょうか。
川島:かんしゃくを起こしている最中に、それを止める魔法の声かけというものは、基本的には存在しません。
ただ、低学年のうちであれば、何かがうまくいった時に、「諦めずにチャレンジしたからだね」というように、結果ではなく「プロセス」に目を向けて声をかけてあげることが大切です。
子どもは成功したことは覚えていても、そこに至るまでのプロセスは忘れがちです。成功体験を積んでいる時に、「その成功は、諦めずに挑戦したからなんだよ」と大人が言語化してあげることで、次に困難に出会った時も粘り強く立ち向かえるようになっていきます。

高濱:できなくて泣いたり、かんしゃくを起こしたりする子は、周りの大人は大変ですが、長期的には伸びる子が多いです。なぜなら、そこには「できるようになりたい」という強い主体性があるからです。
「できなくてもいいや」と逃げてしまうのではなく、心から「できるようになりたい」と思っているからこそ、悔しくて感情が爆発するのです。周りは大変ですが、「このエネルギーが、この子を後伸びさせるんだな」と思って、見守ってあげてほしいと思います。
――【中3女子・LD傾向】軽度のLDがあり、大量の宿題が終わりません。本人は学校や友人の評判を気にして、レールから降りることができない状況です。どうすれば「学校のテストがすべてではない。もっと自分の興味を探求していいんだよ」と伝えられるでしょうか。
川島:その子の強みや持っているものを引き出せるような、親以外の大人との出会いが重要です。
私の恩師が主宰する学びの場があるのですが、そこでは、本人も親御さんも気づいていなかった、その子の素晴らしいところを発掘してくれます。そういった場所で自分の良さを認めてもらえると、それまで苦しんでいた学校のテストなどにも、前向きに取り組めるようになったという事例があります。
その子の良さを本当に理解してくれる大人を、たとえ一人でも見つけてあげることが、親御さんにできる最も尊いことだと思います。
高濱:これまで本当に色々なパターンの子たちを見てきましたが、理解のない先生に出会ってしまうと、子どもは不幸です。しかし、特性を理解してくれる先生に出会うと、道はいくらでもあります。
無理をしている状態なのであれば、学校という枠にこだわりすぎず、その子にとってベストな道を探ってあげることが大切です。今は、オルタナティブな学びの場もたくさんあります。情報を集め、その子にぴったりの居場所を作ってあげることで、状況が劇的に変わることはよくあります。
【テーマ6】親の関わり方・時代背景
――【年中男子】ChatGPTなどを日常的に使う中で、息子が全く違う時代を生きていくことを痛感しています。これからの子どもたちには、どのような力が必要だと考えられますか。

川島:AIという新しいテクノロジーを使えば、これまで専門家でなければできなかったことが、個人でもできるようになってきています。私自身、次の教材のかなりの部分を自分で直接開発しました。
こうした時代にまず必要なのは、「これを作りたい」「これが好きだ」という好奇心や情熱です。AIは言われたことはやってくれますが、100%の答えを返してくれるわけではありません。「自分はこうしたいんだ」という強い意志を持って、粘り強く対話していく力、論理的に思考する力はますます重要になるでしょう。
しかし、そうしたスキル以上に大切になるのが、花まる学習会がずっと大切にしてきたような「人間力」だと考えています。
スキルというのは陳腐化しますが、「あなたと一緒にいたい」「またあなたに会いたい」と思ってもらえるような人間的な魅力、好きなこと、そこから生まれる人との出会いといったことの方が、はるかに大切になっていくと思います。
高濱:本当におっしゃる通り、時代は激変しています。知識集約的で、合理性で勝負するような仕事は、どんどんAIに代替されていくでしょう。
では、どんな力が必要か。一つは、他の人が考えつかないような「突き抜けた思考力」です。これがあれば、どんな時代でも道を切り拓いていけます。
そしてもう一つ、川島くんが言ったように、これからは「人間力」、つまり「魅力」が勝負になります。ざっくり言うと、「温かさ」と「面白さ」です。
分かり合えない相手に対して、上から決めつけるのではなく、「この人はどうしてこう考えるんだろう」と相手の気持ちに寄り添えるような「温かさ」。そして、人を惹きつける「面白さ」。家族みんなで冗談を言い合うような、日常の中の「笑い」を大切にすることも、これからの時代を生き抜く上で重要な力になるはずです。
最後に
対談の最後に、登壇者の二人からメッセージが送られました。
高濱:今回ご質問をくださった方々は、皆さん本当に優秀で、教育熱心な方ばかりだと感じました。だからこそ、お子さんに対して先回りして色々と言ってしまいがちですが、子どもは自分のペースで、自分で決めてやり抜く中で育っていきます。特に思春期以降は、信頼できる「外の師匠」に預ける勇気も必要です。私が、私が、という思いから卒業することで、お子さんはもっとのびのびと育っていくと思います。
川島:これを聞いてくださっている保護者の皆様は、子育てにおいて何が大切か、本質的な部分をすでに掴んでいらっしゃると思います。ただ、周りの情報に煽られて、その軸が揺らぎやすくなることもあるでしょう。
一番大事なのは、保護者の方自身の心と時間の「余裕」です。どうか、ご自身のことを大切に、ご自愛ください。

