2026年1月15日、花まる学習会の高濱正伸先生と、弊社の代表・川島慶による対談ライブ配信「考えることが好きな子どもの育て方」が開催されました。
当日は300人を超える方にお申し込みいただき、ライブ配信も常時80名以上の方が視聴されるなど、大盛況のうちに幕を閉じました。
「すぐに答えを聞きたがる」「難しいと諦めてしまう」といった、多くの保護者様が抱えるお悩みに対し、専門家の二人がそれぞれの視点から具体的なアドバイスを送りました。本記事では、その白熱した対談の模様を余すところなくお届けします。

【登壇者プロフィール】

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)
花まる学習会代表。算数オリンピック委員会理事。長年にわたり教育現場の第一線に立ち、多くの子どもたちとその保護者から絶大な支持を得ている。著書多数。

川島 慶 (かわしま けい)
ワンダーファイ代表。栄光学園高校、東京大学卒業、同大学院修了。大学在学中に高濱先生の著書『算数脳』に感銘を受け、花まる学習会での問題作成や新規事業立ち上げを経て、ワンダーファイを創業。著書に、『自分の頭で考える子に育つ 学ぶ力の伸ばし方』など多数。
【テーマ1】考える前に止まってしまう子への関わり方
――【小1男子】自分で考える前に、すぐに答えややり方を聞いてきます。「自分で考えてごらん」と言うと、「ママが考えて」と返してきます。まずは自分で考えるという習慣をつけるには、どうしたら良いでしょうか。
川島:これはとても自然なことで、多く聞く話です。子どもは親御さんや周りの大人の期待にものすごく応えたい生き物です。小学校に入ると「答えが合っているかどうか」で判断される場面が増え、「正解が求められている」と感じるようになります。
すると子どもは、間違いが起こりうる試行錯誤をするよりも、手っ取り早く答えを聞いて期待に応えようと、いわば「正解をハック」している状態になるのです。
そこで「全部自分で考えて」と突き放すのではなく、「あなたはどう思う?」「私だったらこう考えるな」といった形で、考える入り口を示してあげるのが良いと思います。
高濱:まさにその通りで、子どもは「答えが合っているとママがいい顔をする」という経験を繰り返して、今の状態になっています。
では、どうすればいいか。一番良いのはパズルです。例えば迷路は、勉強だと思う子はいません。でも、夢中になって「わからない、わからない…あ、こうか!」と閃いた瞬間、脳にすごい快感物質が出るんです。
この「わかった!見えた!」という快感を知ってしまった子は、「自分で考えないと面白くない」と思うようになります。考える喜びを知り、「褒められるから」ではなく「自分が気持ちいいから」考える。その状態にすることがとても大事です。
――【小5女子】自分で考えるように促しても、「わかんない」と言って深く考えずに答えを求めてきます。自分で考えることが楽しいと思えるようになるには、どのように接すればよいでしょうか。

川島:小学5年生くらいになると、親御さんが手をかければかけるほど、むしろ逆効果になってしまうことがあります。高濱先生も常々おっしゃっていますが、高学年になったら「外の師匠」を頼るのが良いでしょう。
子どもは何でも不安を相談できるような存在を見つけ、そういう関係を築くことが大切です。親御さんが関わるよりも、外の力を借りるのが良いと思います。
高濱:その通りですね。親は我が子をずっと見ているので、つい同じように関わろうとしてしまいますが、子どもは芋虫から蝶々に変わるように、心も体も大きく変化しています。
この時期の子どもの本質は、「親ではない、外の憧れの人の言うことは、やたらとよく聞く」ということです。いとこのお兄さんや、中学受験で成功した先輩、塾の先生など、そういう「師匠」と呼べる人に出会うと、コロッと「算数が好きになっちゃった」と言い始めたりします。
親が「私の言い方を変えて何とかしよう」とすると、思春期特有の母子喧嘩になるのがオチです。この時期の親の仕事は、「私がどうにかしよう」と考えるのをやめて、「誰に預けようかな」と考えることです。良い先生に出会わせてあげることが、すごく大事だと思います。
――【小3女子】読書好きで好奇心旺盛ですが、自分の考えを深めたり、言葉にしたりする力が育ちません。質問されたときに「どうしてだと思う?」と考えるように導くのですが、「わからない」「知らない」の一点張りです。どう関われば良いのでしょうか。

川島:まず、今までの関わり方が素晴らしく、お子さんは最高の状態にあるということをお伝えしたいです。ですから、何かを追加でしようとするより、今の状態を続けていくことに自信を持ってください。
アウトプットに関しては、大人に近い水準で日本語が完成してくるのは高校生くらいです。小学生のうちは、アウトプットできなくて当然です。
花まる学習会の現場でも、6年生の後半くらいから急にブワーッと文章が書けるようになる子をたくさん見てきました。「書きなさい」と強制するのではなく、そういう時期が来るのを待ちながら、今の素晴らしい状態を見守ってあげるのが良いと思います。
高濱:本当に、ここまで育てただけでも大したものです。親というのはどこまでも心配し、欲が出るものですが、小学3年生の段階としてはほぼ満点です。
ただ、対話の仕方を少しだけ工夫すると、さらに良くなるかもしれません。お子さんが疑問を口にしたとき、「確かにね、なんでだろうね」と共感し、「一緒に調べてみようか」とポジティブな形で対話を終えることを意識してみてください。
「いい質問をしてくれたから、お母さんもわかったよ!」というように、お子さんの「問い」の価値を大人が認めてあげるのです。お母さん自身がその問いに夢中になっている姿を見せることで、お子さんはさらに良い方向に育っていくと思います。
【テーマ2】途中で投げ出す子に、どう“考え続ける力”を育てるか
――【小2男子】少し難しいと感じると、勉強でも日常生活でも、やる前から諦めがちです。また、集中力がなく、すぐに考えるのを放棄してしまいます。どう関われば良いでしょうか。
川島:まず「諦めがち」という点ですが、子どもは簡単なことができたときに「すごいね!」と称賛される経験を繰り返すと、「難しいことに挑戦してできなければ、称賛されなくなる」と感じ、挑戦を避けるようになることがあります。褒めることが悪いわけではありませんが、過度に「できたこと」だけを認めすぎないことも大切です。
それよりも、ステップが細かく刻まれていて、「できた!」という快感を積み重ねられるような教材、例えば『なぞぺ〜』や『シンクシンク』のようなものに触れる機会を増やしてあげてほしいです。
次に「集中力」についてですが、子どもは本来、自分が「これだ!」と思ったものにはものすごく集中します。大人が集中してほしいものに集中しない、というだけのことです。
ですから、「これに集中してほしい」と願うより、その子が「何に集中するのか」を観察する方が、良いアプローチにつながりやすいと思います。何かを得意になることは、友達になることと似ています。親が「A君と友達になってほしい」と願っても、実際に友達になるかはその子次第ですよね。それと同じです。

高濱:なぜこういう状況になるかというと、子どもが「周りからどう評価されるか」を気にし始めた証拠です。「間違えるとお母さんが嫌な顔をするな」と感じると、考えること自体が嫌になってしまいます。
低学年のうちは、親子で喧嘩になりがちな文章題は、僕はやらなくてもいいとさえ思っています。それよりも、計算や漢字といった基礎をしっかり固め、あとはパズルや囲碁など、一度始めたら止まらなくなるような思考力系の遊びに夢中にさせてあげる方が、後々伸びるのではないでしょうか。
文章題に子どもが挑んでいる状況は、英語が得意でない人が、英語で書かれた数学の問題を解くようなものです。「文字を読んで状況を想像する」ことと、「問題を考える」という二つの高度な作業を同時にやらせるのは、まだ早いのです。
――【小2女子】めんどくさいが口ぐせ、特に問題を解いた後のお直しの時にやりたがりません。わからないからではなく、雑に解いたために字が読めなくて減点になることが多くますますモチベーションがあがりません。このようにすぐ集中がきれて、なおかつやりたがらない子をうまく、学習に興味をもたせるコツを知りたいです。
川島:「めんどくさい」というネガティブな言葉は、口にしていると思考もネガティブになりやすいので、注意が必要です。ただ、家庭内で親御さんが声かけを変えるだけで解決するのは難しいかもしれません。
こういう時も、やはり「良い大人に預ける」のが効果的です。例えば塾の教室のような場で、先生がネガティブな言葉をぴしゃりと止め、空間全体の雰囲気を前向きに変えていく。すると、その影響が家庭にも波及していくことがあります。
高濱:「めんどくさい」「嫌い」といった言葉は、基本的に「逃げ」です。特に幼児期に癖になると、後々大変なので、花まる学習会では徹底して言わせないようにしています。
もう一つ、「お直し」についてですが、そもそも子ども、特に幼児期の大きな特徴は「振り返りが嫌い」ということです。子どもは常に「前へ前へ」と生きていて、過去を振り返るのが苦手なのです。
成長段階として、振り返りができるようになるのは、早くて小学校高学年、本格的には中学生くらいからです。今のお子さんの状態でできないのは、ある意味当然のことだと理解するだけで、親御さんの気持ちも少し楽になるのではないでしょうか。
【テーマ3】好奇心を「点」で終わらせず、「探究」に育てるには
――【小5男子】色々なことに興味を持ち、ネットで調べたり親に聞いたりしてくるが、深く学ぼうとはしない。薄い知識はたくさんあるので、「知ってるよ!」と喜んで親にそのことについての説明はしてくれるけど、自分の考えや思いまでは出てこない。「一方的に話す」ことはできてるけど、「話し合い(ディスカッション)」までは出来ないようなのが心配です。もう高学年ですが、これからでも家庭でできることがあれば、教えていただきたいです。
川島:まず、色々なことに興味を持てる時点で、とても素晴らしい状況です。その上で、高学年になると親と深い議論をすることはほとんどなくなります。
「深く考える」というのは、そもそも誰にでもできることではありません。私自身、恩師との出会いを通じて、初めてその体験をしました。
その入り口として家庭でできることはいくつかあります。一つは、伝記などを通じて「この人、かっこいい!」という憧れを抱かせること。もう一つは、親御さん自身が何かに夢中になる姿を見せることです。
私の祖父は囲碁や将棋が大好きで、親戚が集まってもそっちのけで夢中になっていました。その姿を見ていたから、「これだけハマるということは、よっぽど面白いものなんだろうな」と感じ、私も自然と好きになりました。親が楽しんでいる姿を見せることが、一番の近道かもしれません。
高濱:良い先生に出会うことは本当に大きいですね。私立中学を受験する意味の一つは、そこに素晴らしい先生方がいるからです。憧れの存在に出会うと、子どもは「面白い!」と感じ、深く学び始めます。
また、作文や日記を書くことも、思考を深める上で非常に有効です。自分の心を書き出す作業は、自分自身を客観的に見る「メタ認知能力」を育てます。書くことを通じて自分との対話が始まり、思考が深まっていくのです。
もう一つ、これは私個人の方法ですが、「頭が良くなる本」を読むというのもあります。非常に優れた思考力を持つ人の文章を読むと、自分の頭の中も整理されて、思考がクリアになる感覚があるのです。親子で「この本を読むと、なんだか頭が良くなる感じがするね」といった共通の体験を持つのも、面白いかもしれません。
以上、対談ライブ配信「考えることが好きな子どもの育て方」レポート記事の前編でした。後編では、「学習・勉強(特に中学受験)への向き合い方」「特性のある子との付き合い方」「これからの時代に必要とされる力」について、お二人の考えを伺いました。
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