「次の一手が見える感覚」を、どうUXに落とし込んだのかアプリ教材『究極の平面図形<角度>』開発者インタビュー<前編>

ワンダーファイについて

中学受験や学校の授業で子どもたちがぶつかる算数の壁。それをテクノロジーとデザインの力で「楽しい!」に変えてきたのが、アプリ教材の「究極シリーズ」です。

立体(切断・展開)/計算/平面(相似・面積比) に続き、第5弾となる新作のテーマは角度。

今回は、このアプリの特徴と、子ども目線に寄り添ったUI・UX設計について教材開発者へインタビューを行いました。

『究極の平面図形<角度>』公式HP:https://angle.ultimate-math.com/


コンテンツディレクター  染森 紫有(そめもり しう)

大学では日本中世史を専攻し、古文書と向き合う日々を過ごす。大学時代から「花まる学習会」で講師として子どもたちへの指導に携わり、2016年に花まるラボ(現ワンダーファイ)へ参画。教室運営や教材開発を経て、現在はディレクターとしてコンテンツの企画・開発を担当している。
趣味は野球観戦、ギター、写真、工作、料理、史跡巡りなど。


「技」を習得しながら進む、“ダンジョン型”学習体験

──『究極の平面図形<角度>』では、どんな学習体験を目指したのでしょうか?

これは「究極シリーズ」全体を通して言えることなのですが、パズルのように楽しく学べる設計にはこだわっています。

中学受験算数を扱っているので、教材っぽくなってしまうと、子どもにとってはとたんにとっつきにくくなるんです。
なので、ただ問題を並べるのではなく、レベルアップしていく“わくわく感”を大切にしています。

ゲームでいうと、最初は装備が木の棒しかないような見習いの状態から始まって、新しい技や能力を覚えながらダンジョンをクリアしていくうちに、最後のボスに立ち向かえるようなレベルに仕上がっていく、みたいな感覚ですね。
急激に難易度が上がりすぎないよう、細かくステップアップを設定していて、「徐々にできるようになっている」という感覚を、子どもたち自身が感じられるようにしています。

図形の性質を「公式」ではなく「技」という形で整理しているのも、子どもたちが「自分の技が増えていく」という感覚を持ちやすくするためです。

また、デジタル教材だからこそ、操作も極限まで直感的にしています。
紙教材だと時間がかかってしまう問題でも、できるだけ少ない操作で、スピーディーに進められるように設計しています。

手数が多い角度問題だからこその“マイルストーン”設計

 ──今回の角度編では、特にどんな部分を意識して設計されたのでしょうか?

今回の「角度」は14種類の技があり、これまでより扱う図形や角度のパターンもかなり多かったんです。

これまでの「究極シリーズ」では、あえて問題を解く前に技の説明をせず、触ってもらいながら理解してもらう形を取っていたのですが、いきなり取り組むと混乱してしまう子がいたので、今回は初めて、技の説明を事前に入れる形式にしました。
とはいえ、説明を長く読む教材にはしたくなかったので、図やイラストを使いながら、重要なポイントだけを直感的に伝えるようにしています。

また、「角度」は手数が多い単元なので、デジタル教材だからこそできることとして、「この角度を通ると、ゴールへの最適なルートにたどり着ける」という重要な“マイルストーン”を示すようにしました。

分かっている角度を片っ端から書き込んでいく解き方だと、どうしても時間がかかってしまうんですよね。
角度が得意な子は、「この角度を出すには、まずどの情報が必要か」を逆算して考えています。
なので、「なんでこの角度を求めるんだろう?」を考えながら進めていく中で、「確かに、ゴールに行くためにはこの情報が必要だった」と気づけるようにしています。

昨今の中学受験算数では大きな単元として角度が取り扱われることは少ないのですが、難易度の高い図形問題を解くにあたっての”要”として問われることが多くなりました
つまり、角度を導き出すところでつまずくと、その先に進めないといったことが起こります。

実は、自分自身も中学受験で角度に苦労した経験があるんです。
入試本番で、まさに「最初の小問が解けないと、その後に進めない」という問題に当たったことがあって。
当時は、分かっている角度を片っ端から書き込んでいく解き方をしていたので、「やばい、時間がない」と焦ったことを今でもはっきり覚えています。

だからこそ、これから中学受験に挑む子たちには、そんな思いをしてほしくなくて。
分かっている情報をひたすら書き出していくという経験もとても重要ですが、このアプリでは、限られた時間の中でも整理しながら進められる設計にしたいという思いがありました。
マイルストーンで解き筋を示すことで、「この角度を導きだすために、どの技が最適か」を見抜く経験を多く積めるようにしています。

「子どもの目線に降りる」――ワンダーファイ流UX思想

──子ども向けのUI/UX設計で、大切にしていることはありますか?

私たちは「子どもの目線に降りる」ことを一番意識しています。
UI/UXでも、「これだと情報が入ってこない」とか、「テンポが遅い」とか、子ども目線で感じたことをフィードバックするところから始まるんです。

子どもって、大人の意図をすごく察するんですよ。
「大人がこうなってほしいと思って言っているんだな」というのも見抜いていて、「子どもだまし」だって結構すぐ伝わってしまうんですよね。

特に「究極シリーズ」は高学年向けなので、かわいらしいキャラクターをふんだんに使ったり、過度な演出で子ども向けに寄せすぎると、「下に見られている」と感じて、逆にやってくれなくなることもあります。
そのため、「言いすぎない」ことや、本質だけを残して余計な飾りを入れないことは、かなり意識しました。

ワンダーファイでは、こういった「子ども目線や子どもの感覚を磨く」ことをかなり大事にしています。
アプリ開発のエキスパートとして入社した人でも、まずは授業に講師として入り、実際に子どもたちと接するところからスタートします。

私自身も、もともと大学生の時に「花まる学習会」で講師のアルバイトをしていました。
その後、ワンダーファイに新卒で入社してからも、責任者として教室を3年間運営する経験もしました。
年中さんから小学6年生まで、本当にいろんな子どもたちを見てきたので、その経験は今のアプリ制作にもかなり活きていると思います。

──実際に完成品をテストした子どもたちの反応はいかがでしたか?

もう、作っていたこちらが嬉しくなるくらい、「超楽しい!」と言って使ってくれました。

最初は、手当たり次第にポチポチ押すような遊び方をする子もいるんですけど、進めるうちに、「どれとどれを使えばいいかわかってきた!」と、子どもたち自身が言ってくれるようになって。

ふとした瞬間に、すごく集中して解き始める瞬間があるんです。
「あ、今この子の中で、技と解き方がつながったな」という表情を見られると、本当に嬉しく思います。

編集後記

今回のインタビューでは、“子どもがどう考え、どこで迷うのか”まで含めて設計されていることが印象的でした。
『究極の平面図形<角度>』には、限られた時間の中で解き筋を見つけなければならない中学受験だからこそ、「次の一手が見える感覚」を身につけてほしい、という思いが込められています。

後編では、実際に100問の問題設計を担当したクリエイターに、問題づくりの裏側や、「技」をどのように体系化していったのかについて話を聞きます。

『究極の平面図形<角度>』公式HP

角度問題の魅力と問題作りへのこだわり。『究極の平面図形<角度>』開発者インタビュー<後編>